「人が資産」な会社を投資家は見極めることができるのか?

ほぼエッセイ

アベノミクス以降、経済活動は活発なようで、様々な業種で人手不足問題が浮上している模様です。少子化による生産年齢人口の減少や東京五輪へ向けた経済活動の活発化が相まってこの状況はしばらく続きそうとのこと。

とある経済誌によると、人手不足のおかげで業界全体がブラックといわれていたIT業界のホワイト化が進んでいるとか。なぜなら労働条件がまともじゃないと他業種に人が逃げてしまうから。笑えない話です。

労働集約的な業界は需要があっても労働者がいないことには受注できません。したがってサービス業や建設業界、情報産業や製造業のラインスタッフなどは人手不足の影響を受けやすいといえるでしょう。

さて、一口に「労働集約的な業界」というものの、実際には二種類あります。古典的な労働集約的な産業、つまり肉体労働などの単純作業を決められた通りに行うのが仕事で、労働者が付加価値をのせにくい産業がひとつ。もうひとつは、実際には知識労働者の集まりで労働集約的ではあるものの属人性が高い産業。「人が資産」と標榜する会社が多い業界は後者です。

「人が資産」ということは、利益の源泉が人間の能力にあり、優秀な人材がいないことには業績も伸びないということです。しかし、バランスシートの資産の部に人間が載ることはありません。財務諸表上は資産どころか費用です。そして、従業員が有能かどうかがわかる項目は存在しません。

そのような会社の財務諸表を読んでも、分かるのは現在の業績だけで、会社のポテンシャルを推し測ることは不可能です。リストラにより人件費を減らすと財務諸表上は業績が良くなりますが、実は利益の源泉たる「資産」を捨てているだけかもしれないのが怖いところです。それはなにも「人が資産」な会社に限らず、知識労働者が中心となる現代の企業全般にいえるやもしれません。

つまるところ、知識労働者が利益の源泉である企業をどのように評価していくか?という難しい問いが残ります…。

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