もうすぐオフショアなんて成立しなくなるんじゃ?【後編】

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もうすぐオフショアなんて成立しなくなるんじゃ?【前編】の続きです。

昨日の記事では、オフショアというものを紹介しました。

ただ、オフショアの前提には、「オフショア先の人件費が非常に安価である」というものがあります。そして、「人件費が安価なのは単純労働が中心」であることに注意すべきです。高度の知識や技能を要求する場合には賃金水準は新興国だって当然上がります。

つまり、オフショアが「効く」前提には、「プログラミングが単純労働であり、その労働者は低賃金で雇える」という暗黙の仮定があります。ところが、そう思っているのは日本人だけらしいのです。

過去にはMicrosoft、最近だとgoogleやAmazon、そして近年はfacebookといった企業には世界から優秀なプログラマが職を求めて応募します。また企業側もそういった優秀なプログラマをいかに採用するかを考えています。つまり、プログラマはそもそも「IT土方」などと呼ばれるべき低賃金・単純労働者ではないというのがアメリカの認識ですし、日本以外の国々でもそのようです。

実際、先日のセミナーで聞いた話によると、日系のIT企業が中国に進出して現地の有力大学卒のプログラマを雇ったが日本式のマネジメントを持ち込んだため、みな1年もたたずに辞めてしまったとのこと。セミナー講師曰く、「プログラマは高度な技術者だし、中国人もそう思っているのだから相応の待遇をしなければ、労働流動性の高い国ではほかに逃げられてあたりまえ」だと。

さて、こうなってくるとIT業界においてオフショアが本当に「効く」のか?とう疑念が生じます。

新興国は年々平均賃金が上昇しているので、そのなかで知的労働を行うプログラマはの賃金が年々下がるはずはありません。そうなると、日本人はプログラマを低賃金労働者と思っていても、諸外国ではそう思っていないので、日本人が思っているようにはプログラマを安価にオフショア先で調達することは難しくなるはずです。国内で低賃金で働かされているプログラマとそう変わらない人件費になるのは時間の問題です。あるいは、もうそう変わらないレベルに来ているのかもしれません。

日本IT業界の産業構造というのは、世界標準からかけ離れた「ガラパゴス」であることに思いを至らせないまま、オフショアという発想に行くのは危険かもしれません。まして、「ガラパゴス」であることを自覚せずに、「グローバル化」の名の下に海外展開を模索するのは愚の骨頂といえましょう。

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