アンカリングも善し悪し。

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新しい環境に適応するときや、新しいことを行うときには、似たような環境での経験が基準点となることは多いと思います。たいていの場合には、何もない状態からのスタートよりは楽ですが、人間のアンカリング効果は案外強いので注意する必要はあります。

世の中の出来事というのは抽象化してしまえば相似な関係にあることが多いので、よほど特殊な事でなければ似た事例というのは見つけ出すことができるでしょう。相似な事象が具体的であるほどに、具体的な答えを推測することはできます。別な世界から引っ張ってくるというのは、アイディアを出すときのひとつの王道ですらあるので、新たな世界で何かを生み出すのに活用しない手はありません。

一方で、既成概念にとらわれすぎるということにも注意せねばなりません。相似な関係を使って出てくる答えは、具体の世界では別々な事象であっても、抽象の世界では同一ですから、本質的に新規性があるのかというとそうではありません。つまり、一件目新しく見えたとしても本当は既成概念の枠からは出ていないことになります。無論、それでも事足りる場合はそれでいいのですし、そんなに目新しい概念が頻繁に出てくるわけもないのですが、いつもいつもそれでは芸がありません。

認知バイアスのひとつに、アンカリングというものがあります。意思決定の際に既知の値をほとんど無意識のうちに基準値として用いてしまうのが人間です。本人は既存値に引っ張られている自覚がないケースも多々あることが実験によりあきらかになっています。

したがって、思考の際にも無意識のうちに既知の概念が起点となっている可能性には十分配慮すべきです。意図せざるアンカリングがよからぬ結果を招かぬように。

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