「会社が消えた日 三洋電機10万人のそれから」

書評

日経電子版を眺めていたところ、「転職の時期を読み切れ 元三洋電機社員サバイバル(上):日本経済新聞」という記事が目にとまりました。(有料会員限定記事です)

タイトルは少々「釣り」な感じで、

今の会社にはいたくないが、行く当てもない。どのタイミングで辞めるべきか?

に対する解が書かれているわけではありません。むしろ「Panasonicに買収された三洋電機社員のそれから」が記事になっています。

10万人が9000人になり、残った9000人のいるPanasonicさえどうなるか分からない、どんな大企業でも何が起こるかわからない時代だと感じます。

さて、記事を読み進めていくと最後に、「会社が消えた日 三洋電機10万人のそれから 」発売のお知らせが書いてあるわけです。なるほど、新手の販促記事なのかと思いつつ、こういう時は即Amazonに発注です。

早速届いた本は、ソフトカバーのビジネス書ですが300ページとなかなか重厚。冒頭の記事は、(中)・(下)と続くようですが、おそらく本書はその内容のベースになったものであり、より詳細が書かれていると思われます。量は多めですが、語り口は物語調なので読みやすく一気読みできました。

なお、三洋電機がPanasonicに買収されるまでのいきさつは過去に「三洋電機 井植敏の告白 (日経ビジネス)」という形で書かれており、三洋電機に対しては批判的な論調のようですが、本書はどちらかというと三洋電機(とその社員)に好意的です。

ノンフィクションといえで著者の主観により執筆されるので、書かれてあることをどこまで鵜呑みにしてよいかは難しいところです。実際、本書に登場する当時の人事部長は

あっちで活躍している、こっちで重宝がられている、という話は、うまくいっているから聞こえてくるんです。実際には、会社から放り出されたあと、つらい人 生を生きている人も多いはずです。そういう人の話は聞こえてこない。彼らが何も言わないからです。だから、『会社がなくなってよかった』なんて、僕は口が 裂けても言えません

と語っています。

そこを加味すると、本書は三洋電機を去ったものの幸運にも第二の人生を見つけた人々の物語なのかもしれません。

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