ITは進化してるけどパラダイムシフトは起きてない。

評論

この時期になると雑誌は「2013年大予測」のような、来年の予測記事を書くのが好例ですね。もちろん、予測する対象はその雑誌の得意とするものになります。

さて、ITの業界予測。

技術予測の方は、記憶域の速度が速くなるとか、クラウド化が進むとか、企業内のSNSが進むなどといろいろ言われてはいます。変化が起こるからエンジニアは乗り遅れると職を失うよ、というのが雑誌的な煽りなんでしょう。

しかしコンピュータが生まれてからというもの、パラダイムシフトなんて起こっていないというのが筆者の見方です。パラダイムシフトとは不可逆的な変化です。ITの世界で起こっているのは揺り戻し可能な変化です。

例えば、HDDがSSDに変わり、メモリが大容量になることでCPUとの速度差が小さくなるからシステムの作り方が変わるという話があります。もちろん、変わるには変わるのでしょうが、CPUとHDDにこんなに速度差ができたのはむしろここ10年ぐらいです。さらにその昔はすべてのデータをメモリにロードして計算したのだから、ある意味では元に戻るのです。

あるいは、クラウド上のリソースを時間課金で使う発想だって、初期の計算機の使い方とそう変わりはしません。もともと計算機は手元にあるものではなかったのですから。

仮想化も現在はソフトウェアで実現されていますが、いずれハードウェアに取り込まれるでしょう。スマートデバイスだって、PDAに通信機能が内蔵されたものと考えれば新しくはありませんし、ポケコンなんてものもあったわけです。

技術的には確かに進歩していますが、抽象化すれば行ったり来たりしているのがこの世界です。本当にパラダイムシフトが起きるのは可逆論理回路が実装されたとき、つまり量子コンピュータが実用化されるときでしょう。

 

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