中央集権と地方分権を考えるシリーズその3です。
昨日の話だと、元気な企業は現場への権限委譲が進んでいるのではないか?というのが仮説でした。
一方で、世の中を見渡してみると企業買収や合併、業務・資本提携などなど大規模化がトレンドに思われます。この流れはどちらかというと中央集権化と捉えることが出来ましょう。
これはどう解釈したらよいのでしょうか?
一つの解としては、
「コストセンターとなるインフラ部分だけを統合・集中して、プロフィットセンターである現場には権限を委譲する」
というのがあり得るでしょう。
総務と呼ばれるような部門が行う業務はたいていの企業で同じように発生しているはず。そういったものを集中させて効率化・合理化を行えば、リソースをプロフィットセンターに振り向けることも可能でしょう。
実際にこれが現実の企業においてどれほど適用可能かは難しいところではありますが…。
さて、そうなってくるとITシステムの姿はどうなっていくのでしょうか?
昨今のIT業界では
「サーバ統合でコスト削減!」とか「クラウドの利用でコスト削減!」
と喧伝しています。
サーバ統合にしても、クラウドの利用にしても、コストメリットを出していくためには標準化されたシステムを利用するということが前提になります。個別要件でシステムを構築していてはサーバだけ統合してもコストはたいして減りませんし、クラウドも個別にカスタマイズを加えるほどに結果としてコストはかさみます。
したがってコストメリットを出すためには標準化されたシステムに合わせて業務も標準化される必要があります。間接部門の業務に関してはある程度これは可能でしょう。では、現場の業務はどうでしょうか?
現場に権限を委譲するならば、現場ではそれぞれの裁量で様々な施策を行うことでしょう。そうなると、システムを全社的に標準化するのは難しくなります。現場ごとの個別機能のついた全社システムが効率的かは甚だあやしいですし、現場と離れたところにシステムがあってはそもそも迅速に対応出来ません。これでは、現場への権限委譲も無意味です。かといって、今の時代になんのシステムもなく業務を回すのも難しいので、なんらかの形で現場固有のシステムが登場するのは避けられなさそうです。
それが、SIerの開発するシステムなのか、個別にパッケージ製品を導入するのか、SaaSのようなものを活用するのか、それはケースバイケースでしょう。
そうなると結局はシステムが分散することになるので、SEとしては悩ましいのではありますが…。