価値が生まれるとは価値観が創られること。

評論

前回はマネタイズにおける裁定取引について考えたのでした。

 

さて、本当に新しい価値創造とはどんなものなのか?を『新しい市場のつくり方』ヒントに考えてみます。この書籍の中で、トイレのウォッシュレットの事例が出てくるのですが、これが非常に興味深いのです。

いまや日本のトイレではウォシュレットは珍しいモノではなくなり、ウォシュレットのないトイレなど考えられないという人もいるくらいです。しかし、世界的に見ればウォシュレットというのはまだ少数派の存在で、そのことを書籍ではメジャーリーグの松井選手が最近やっと自宅にウォッシュレットをつけたというエピソードを使って紹介しています。

ウォッシュレットは使ってみると多くの人がその良さを感じるようですが、果たして体感する前からその価値を高く評価する人がどれほどいるかというと多くはなさそうです。価値を見いだすということはそこにニーズがあるということですが、ニーズがあるということは何らかの困った状況があるということです。この場合でいうと、トイレでおしりを洗いたいのに洗えない、そういう状況です。はたして、これを困った状況だとウォッシュレットの登場前から痛切に感じていた人はどれほどいるのか。おそらくそう多くはなかったのでしょう。そして、世界ではまだそういう人が大勢いるがためにウォッシュレットが爆発的に普及するには至っていない一因かもしれません。

この事例から読み取れることは、いままで存在しなかった価値が生まれ、認識されるということは、新たな価値観が作り出されることと言えます。書籍内にある別な表現を使うと、問題を「発明」することともいえます。問題はそれを問題と思わなければ問題ではありません。先の例でいえば、お尻をトイレで洗えないことを問題と思わなければ、それは問題ではなく、したがってその問題を解決するウォシュレットにも価値は見いだされないのです。

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