資格を持っていても…という議論。〜対偶は真〜

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世の中には数多の資格があります。業務独占資格と呼ばれる特定の職業に就くのに必須な資格から、趣味的要素が強い資格まで。業務独占資格はそれがないと仕事が出来ないのでともかくとして、資格の話になると「資格をもっていても能力があるとは限らない」という議論が持ち上がります。

 

確かに、「資格試験に合格する⇒資格相応の業務遂行能力がある」は必ずしも成立しないのは事実かもしれません。どちらかというと、「資格相応の業務遂行能力がある⇒資格試験に合格する」のほうが成立する確率は高いように感じます。少なくとも情報処理試験にはその傾向があります。事実、試験運営を行っているIPAは「業務遂行能力があるならば簡単に解けるように作問している」という趣旨のことを述べていたと思います。

命題論理の世界では「逆」は真とは限らないので、上記のように「⇒」の左右を入れ替えた命題の真偽は一致するとは限りません。今回の場合もいっちしないケースです。真偽が一致するのは対偶をとった場合です。対偶は「⇒」の左右を入れ替えた上で、「⇒」の左右の文言の否定をとります。

「資格相応の業務遂行能力がある⇒資格試験に合格する」…(A)であれば、「資格試験に合格しない⇒資格相応の業務遂行能力がない」…(B)が対偶になります。対偶の関係である(A)と(B)の真偽は必ず一致するというのが命題論理の世界なので、(A)が成立するのであれば(B)も自動的に成立します。

したがて、資格試験が業務遂行能力がある人は漏れなく合格できるように作られているならば、業務遂行能力がない人は漏れなく不合格になるということです。

「資格試験に合格する⇒資格相応の業務遂行能力がある」よりも「資格相応の業務遂行能力がある⇒資格試験に合格する」のほうが成立することが多いという経験則を踏まえると、資格試験については次のように考えるのが妥当です。

資格を持っていても能力があるとは限らないが、資格を取れない場合には能力がない可能性は高い。つまり、資格は残念ながら業務遂行能力があることを立証する手段としては弱いですが、業務遂行能力がないと思われる人をふるい落とす手段としてはそれなりの有効性を発揮するということです。

対偶がもとの命題の真偽と一致することを知っているとロジカルに考えるときには役にたつかと。

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