原価に占める人件費比率が高い産業のコモディティ化の苦しさ。

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関越道バス事故がニュースでも大きく取り上げられています。犠牲者には哀悼の意を表するとともに、ここから何らかの教訓を引き出し次なる事故を防ぐために考察をしてみたいと思います。

 

ツアーバス型の高速バスは規制緩和によって生まれたものでここ10年弱で急速に普及しました。私も学生時代にはよくお世話になったものですが、平日の便などはガラガラのときもあり「これで採算とれるんだろうか…」と感じたことを覚えています。

東京-大阪便など、需要のある区間を中心に参入会社も多く、それだけ価格競争も激しくなっています。個人的な体感ではツアーバスが出てきた当初よりも最安値は下がっている印象です。一方で設備など付加価値をつけて高い料金を維持している会社やプランもあります。どこかの新聞でも指摘されていましたが、とにかく安さを目指す方向と付加価値をつけて中価格の二極化が進んでいるのは事実でしょう。

 

さて、付加価値がなく4列スタンダードと称される普通の観光バスを利用したタイプの便は価格以外にスポットがあたることはありません。もちろん、旅行会社やバス会社の体勢・サービスに差はあるはずですが、一般利用者が予約する段階でそれを判断するのはほぼ不可能です。また、利用者の側も「移動手段」と割り切って利用しているので価格以外を比較要素とはしなくなります。

つまり、これは高速バスがコモディティ化していることを意味します。そもそも交通機関というものが、「移動」を第一の目的として利用者に求められる以上この帰結はある種避けがたいのですが、高速バスのように原価に占める人件費率が高いと思われる業種ほどコモディティ化すると厳しくなります。コモディティ化して価格競争の激しくなったツアーバス業者が生き残ろうとすれば、バスの稼働率と運転手の稼働率を極限まで高めた上で運転手の賃金を抑制するというコスト削減に走るのは目に見えています。そして、結果としてそれは利用者の安全が脅かされるという今回のような悲劇を招きます。

近いところでは、規制緩和によって台数が増えすぎたタクシー業界に近しい構図が見られます。タクシー会社は稼働「率」ではなく稼働「数」を高めるために台数を増やし、結果として運転手の賃金は下がりました。競争は激化し、タクシー運転手の労働環境が悪化したというのは報道されている通りでしょう。

 

政府としては規制を強化する方向で検討をするのでしょうが、果たしてそれが真の解決策たり得るのかは疑問です。根源的には、人件費の高い国において労働者にしわ寄せがいきにくいビジネスモデルの創出が必要なのかもしれません。

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