SIerのビジネスモデルが優秀なITエンジニアを遠ざける。

IT

IT業界、とくにSIer(システムインテグレータ)と呼ばれるような企業が内包する問題点を指摘した記事を見つけたので、今日はそれをネタに。

日経ビジネス ONLINE の「なぜ優秀なITエンジニアを採用、育成できないのか」によると、

人材紹介経由での転職率は、全業種では約30%なのに対し、ITエンジニアに限定すると8%しか人材紹介系経由での転職がなかった

といい、その理由をいくつか考察していますが、深刻な原因として「仕事に魅力がない」という企業側の根本的な問題を指摘しています。

エンジニア(プログラマー)には三大美徳(怠慢、短気、傲慢)というのがあるのだが、その第一美徳は「怠慢」である事、というものである。これは簡単に言うと「繰り返される仕事はシステムで自動化する。全体の労力を減らすために手間を惜しまない」という気質を指す。(中略)
 「労働集約型ビジネスモデル」のシステムインテグレーター(SIer)だと、毎回オーダーメイドでシステムを作る事になるため、システムの資産化が出来ず、毎回ゼロベースでの開発となる。つまり似たような仕事を繰り返すことになるのである。これは先ほどの美徳に反し、こういった仕事にエンジニアは魅力を感じにくい。

これは非常に秀逸な指摘です。言葉を換えると、SIerのビジネスモデル自体が優秀なエンジニアにとって魅力的ではないということです。

記事中にも記載がありますが、優秀なITエンジニアは「自分の興味のある開発が可能な環境か?」といった観点で仕事を選ぶ傾向にあります。それは、とりもなおさず現場の第一線で働くことを是とする態度です。マネジメント層になることを望んでいないということでもあります。

にもかかわらず、SIerという業態は現場で働くエンジニアをあたかも単純労働者と同じように扱い、人月単価という価格よって取引します。その価格は現場のエンジニアに近づくほど安くなり、逆にマネジメント層の方が高くなります。もちろん業界内のヒエラルキーも価格と正の相関界にあります。SIerがITゼネコンとよばれる所以です。

現場で働くエンジニアに適切な敬意も賃金も払われない業界で働きたい、などと思う優秀なITエンジニアが果たしているでしょうか? GoogleやFacebook,Amazonといった選択肢と比べたとき、優秀なITエンジニアがどちらを選ぶかは火を見るよりも明らかです。

結局のところ、SIerは現場で働く労働者を知識労働者として扱っていないのです。そこが変わらない限り、優秀なITエンジニアがこの業界に流入することはないでしょう。

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