大手SIerが続々とクラウド事業へと舵を切っていますが、B2Bな事業を展開しているSIerが急いでクラウド事業を展開する必要があるのかは疑問です。
クラウドはこれからもますます伸びることは間違いありません。ただし、大手SIerが重要顧客と位置づけているような大手企業が最も導入が遅れるはずです。理由はいろいろと考えられますが、日本企業にパッケージソフトウェアがそれほど受け入れられていないことを考えれば、クラウドの普及が進まないのは当然の帰結です。日本企業では、既製のソフトウェア（パッケージ）をカスタマイズしてシステム開発して業務をシステムに合わせるよりも、現行業務にそったシステムをゼロから開発する（フルスクラッチ）が好まれると言われています。クラウドの提供形態であるSaaSはパッケージをネットワーク経由で提供しているのと大差ないので、パッケージソフトウェアが受け入れられない環境では当然受け入れられません。
一方で、クラウドによる恩恵を受けるのは多額のIT投資が難しい中小企業や個人ではないかと思います。とくにフリーランスで活躍している人は大きな恩恵が受けられるのではないでしょうか。小規模であるほど業務の流れをシステムにあわせて変えることに対する抵抗勢力は小さくなるでしょう。フリーランスであれば、自分さえそのやり方で問題なければ、日々最新鋭のシステムをクラウドを用いて利用できるわけです。
メール一つとってみても、大手企業が情報漏洩防止の観点からWebメールを禁止する中、個人はGmailの便利な機能の恩恵を受けています。スマートフォンなどのデバイスにもすぐに対応するので、どんどん新しい効率的な働き方を模索することができます。
クラウドは大企業よりもむしろ個人に大きな力をもたらすでしょう。少なくとも日本では。そして、これまでよりも大企業と個人の差が小さくなるのではないでしょうか。『フリーエージェント社会の到来』が日本でも起こるのかもしれませんね。